メモ

図書館で借りた本が、久しぶりにヒット。覚えておきたい部分の抜き書き。
「布のちから」田中優子著 より

「手仕事」とは何か
まず第一に、「手仕事」とは手のする仕事である以上に、「身体」の仕事である。...
第二に、「手仕事」とは自然力を征服することではなくて、自然の偶然性に身をゆだねることである。...
第三に、「手仕事」とは、自然とひとりの人間のかかわりによって、あらゆる物を生み出すことができる仕事をいう。あいだに他の何ものの介在をひつようとせず、一個の人間が自然に立ち向かうことができる仕事をいう。...
第四に、「手仕事」によって作られたものの特徴とはすでに見たように「素朴な味わい」などではなく、じつは本来の生産現場では、機械製よりはるかに精巧で丈夫なものを結果する。ただしそこには「手間」と「時間」という。近代ではもっとも贅沢なものが入っているのだ。...

手仕事の「美」とは何か
ヴェブレンも柳も、美とは実用のために作られた手仕事の中にこそある、と言っている。

ソースタイン・ヴェブレンというアメリカの経済学者が...(略)...いわく、「手の労働は、より浪費的な生産方法である。したがって、このような方法によって作り出される財貨は、いっそうよく、金銭的名声の目的に役立つ」....(略)...当時(19世紀末)すでに前近代の生産方法である手仕事の品物は、有閑階級の「見せびらかしの浪費」の最適な対象になっている、と書いたのだった。